シェイプ・オブ・ウォーター 【あらすじ・感想】デル・トロのこだわりが詰まった作品
モンスター映画でオスカーを取るという快挙!おめでとうございます!
ギレルモ・デル・トロ監督のアカデミー賞最多ノミネート作品 シェイプ・オブ・ウォーター を観てきました。
シェイプ・オブ・ウォーター スタッフ・キャスト
スタッフ
登場人物/キャスト
- イライザ(サリー・ホーキンス ):“航空宇宙研究センター”の清掃員として働く障害で話せない女性
- ストリックランド(マイケル・シャノン ):“航空宇宙研究センター”で警備を仕切っている軍人
- ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス ):イライザの向かいに住むゲイの画家
- 不思議な生きもの(ダグ・ジョーンズ ):南米から連れて来られた半魚人
- ホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ ):不思議な生き物を研究している研究者
- ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー ):イライザの同僚の黒人女性
あらすじ
1962年の冷戦下のアメリカ。障害のために喋れないイライザは“航空宇宙研究センター”という政府の機密機関で清掃員として働いていた。
ある時イライザは施設で仕事中に、南米から連れて来られたという不思議な生きものを目撃する。興味を持った彼女はゆで卵をその生きものに渡したり音楽を聞かせたりして、少しずつ心を通わせていった。
イライザは喋れない彼女をありのまま受け入れる彼に惹かれるようになる。そんな中施設の警備を仕切っていた軍人のストリックランドが、彼を殺して解剖すると決めたことを知ってしまい…
感想
私の大好きなギレルモ・デル・トロ作品です。しかも今回はアカデミー賞に最多ノミネートされています。
映画監督という職業の人はこだわりの強い人ばかりなんだろうと想像するのですが、ギレルモ・デル・トロはその中でも突出してこだわりが強い人という印象があります。この『シェイプ・オブ・ウォーター』でも、そのデル・トロのこだわりが全開していましたね。
半魚人のディテールの素晴らしさ、1階が映画館のアパート、映画館の光、研究施設の配管、色使い、どれ一つとってもデル・トロのこだわりが感じられて、デル・トロ好きの私にはたまらない映画でした。最高に良かったです。
この映画は日本国内ではR15+になっていますが、アメリカではR18+(いわゆる18禁)になっています。日米でレーティングが違うのですが、ベッドシーンでバッチリ大切なところが映っていて、日本ではボカシが入っているところがアメリカではそのままなのが原因だそうです。
このレーティングの違いが「カットされたシーンがある」という誤解を生んでいるようですが間違いです。カットされたシーンはありません。
※この先感想にネタバレが含まれています。
レーティングを見れば想像は付くかもしれませんが、女性のオ〇ニーだの半魚人の虐待シーンだの半魚人が本能のままペットを食べてしまうシーンもあって、人によっては目を覆いたくなるかもしれません。一般受けはしないかなぁ(^^; 私はホラー好きなので残酷シーンも平気ですが、美女と野獣のような物語だと思ってみるとキツイかも。
この作品では冷戦時代の軍人ストリックランドが悪役になっています。有名な『パンズ・ラビリンス』も軍人が悪役だったし、去年ファイナルが放送された『ストレイン』も悪の親玉の右腕がナチスの元将校だったし、デル・トロ作品には軍人が悪役というのが多いですね。
このストリックランドは裕福で絵にかいたような(ジャイルズの絵のような)家族を持っていますが、ステレオタイプな60年代の権力を持った強権的なアメリカ人で、上司に自分の失敗を咎められ左遷を宣告されてからは元々あった残忍性がさらに増していきます。
しかしこのストリックランドも他のキャラクター同様孤独な人間なんですよね。家族は彼のケガをした手を気にもかけず機械的に普段の生活を繰り返しているし、空虚な心を癒すためか子供の頃から好きだったキャンディを手放せない、別の見方をすると可哀そうな男です。ストリックランドのような悪役の存在あって、迫害された半魚人と障碍者の女性の垣根を超えた愛がより一層美しく見えるのだと思います。
ヒロインのイライザ・エスポシトは喋れない障害がありますが、毎朝同じ時間に起きて風呂に入ってオ〇ニーをして(デル・トロのインタビューによると“普通のこと”らしいw)出勤する、美女でも何でもないちょっと欲求不満な普通の中年女性です。
パンフレットにあるデル・トロのインタビューによると、ヒロインは初めからサリー・ホーキンスをイメージして脚本を書いたらしいです。また同じくパンフレットの中の評論家の町山氏が聞き手になったデル・トロの話の中で、「美女と野獣」が好きじゃない、「人は外見じゃない」というテーマなのになぜヒロインが美しい処女で、野獣はハンサムな王子様なんだ?だからヒロインをモデルみたいな美女にしたくなかったし、半魚人は猫を食らう野獣のままだからいいんだよと語っています。(要約しているので興味ある方はパンフレットをご覧になってください)
しかし普通の中年女性のイライザが、半魚人に恋をして彼と向き合ったり抱き合っているときの表情がすごく美しいんですよね。最後ジェンキンスの語り口で終わる半魚人とイライザの抱擁は悲しい中に美しさがあって、やっぱりサリー・ホーキンスありきなんだなと思います。
この作品は日本時間3/5に授賞式のあるアカデミー賞に最多ノミネートされています。ストリックランドに虐待されている半魚人が、トランプ大統領に冷遇されている異教徒や移民を象徴しているように見えるし、それをアウトサイダー(のけ者)たちが助けるというストーリーが時代にマッチしていたのが評価されたのでしょうか。
いずれにしてもデル・トロらしいこだわりなので賞レースを意識して作ったとは思えませんが、それでもこういう作り手がこだわった、それもファンタジーというカテゴリーの作品が評価されて賞が取れたら凄いことですよね。ぜひ作品賞を取ってほしい!楽しみにしたいと思います。
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